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「小梅、今日遅くなりそう?」
パッと柔らかい表情に戻り、書類を鞄に片付けながらあたしに尋ねるのん。
「今日は多分いつも通り上がれると思う」
「ならご飯、一緒にしない?」
「……うん」
「良かった、じゃあまた連絡するね」
のんはゆっくりした動作で立ち上がり、もう一度あたしに優しい笑顔を向けた。
それに釣られてあたしも微笑む。
「じゃあ、失礼しました」
「お疲れ様です」
ドアの向こうに行った彼は、プロポーズはされなくて。
でもその代わり、嬉しい約束を残していってくれた。
なんて心地いいんだろう。
今のこの距離感。
歩み寄れば隣に行けるのに、あと一歩の所で立ち止まる。
けれどそれも定まっていなくて、緩やかに互いを見定め分かり合う。
このままだと、気持ちは大きくなる一方だよ。
大きくなりすぎると自分のなかだけで、留めておけなくなる。
その時は。
プロポーズの答え、伝えるから。
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