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あ、ここちょっとヨレてる。
大きい鏡に自分を写しながら、ファンデーションを塗り直す。
眉も薄くなった所を書き足して……
直したい所は沢山あるけれど、時間がギリギリだから最低限の事しか出来ない。
でもやっぱり、でものんの瞳に少しでも綺麗に映りたい……から。
腕時計を確認して、化粧ポーチを片付け駅のトイレから出た。
「……良かった、まだいない」
待ち合わせ場所の時計の下にのんの姿はなくて、安堵の息を漏らす。
と、同時に鞄が震え、腕に振動が響いた。
こんな時間に誰だろうと思いつつ、手を突っ込みスマホを取り出し、ディスプレイを確認する。
着信 藤原典明
のんから?
どうしたんだろう。
「もしもし」
『あ、小梅?
ごめん、今日なんだけど』
この切り出し……
もしかして、ダメになっちゃったかな。
雰囲気でそう感じ取り、高まる鼓動が収まっていくのが分かった。
『俺のいとこも同席したら……ダメかな』
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