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「……伊達君は?こういうのプレゼントしてくれないの?」
一瞬真剣な表情を見せたなっちゃんがゆっくりと瞳を伏せる。
彼女のしなやかな指先が、あたしの左手を優しく開いた。
「あたしが欲しいとか言わないから……」
なんか意味もなく胸が高鳴っていく気がして。
そして、薬指にするりと通された小さな宝石の付いた繊細な指輪。
「ヒカル、似合ってるよ」
キラキラ、目映さに思わず瞳を細める。
……本当に綺麗。
まるで婚約指輪みたい。
なんて、ね。
ふと隣に立つなっちゃんに目を遣ると、陶酔しきった瞳で自分の左手薬指に色んな指輪を嵌めたり外したりを繰り返していた。
「あのね、ヒカル?」
「何かな?」
自分の指先を見つめたまま、口を開いたなっちゃんを覗き込む。
「……月末の日曜、空いてる?」
「う、うん、空いてるよ。何かあるの?」
ハルトとの約束は延期になった。
気晴らしに何処かに出掛けるのも悪くない。
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