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6月の雨。
柔らかい雨の雫が、紫の花を色濃く染め上げる。
……もうすぐあの人に逢える。
そんなあたしの心を感じ取るように、雨に濡れたまま凛と咲く花。
「ヒカルせんせーい?なに見てるの?」
「あのお花はなんて名前ー?」
広い園庭を見渡せる窓辺に集まって来た園児達が、口々に質問を浴びせてきた。
「……あのお花はね、あじさいって言うんだよ」
園児達と同じ目線になるよう屈んで、もう一度園庭の脇に咲く紫陽花の花を眺める。
「せんせい、うちのあじさいは青いろだよー?」
「うちのはピンクいろ~」
「そっか。あじさいはね、色んな色に変わるんだって」
「ふぅ~ん、……あっ、ママ来た!」
「じゃあ、また明日。さようなら」
降園していく園児達を見送りながら、小さな背中に声を掛けた。
「……ママの手、離しちゃダメだよ~!」
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