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母親の持つ赤紫色の傘。
振り返った園児が降った青色の傘。
まるで……紫陽花みたい。
繋がれた手と重なり合う傘の群れを眺めながら、ささやかな幸せの瞬間に胸を躍らせた。
「……では。お先に失礼しますっ」
仕事を終えて、超ダッシュで飛び出した職員室。
廊下でばったり出逢った同僚の先生にすれ違い様、声を掛けられた。
「ヒカル先生?浮かれてますね。何かイイ事あったんですか?」
「……」
本当は園の皆に、いや世界中に言いふらしたいくらいの“イイ事”なんだけれど。
今日は我慢。
それよりも早く家に帰りたいんだ。
「……秘密ですっ!」
小首を傾げる先生を横目に、急いで園を飛び出した。
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