June bride

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上杉ヒカル、25歳。 短大を卒業して、無事に幼稚園教諭の免許を手にした。 晴れて就職した小さな私立の幼稚園。 初めて任されたクラスの担任も漸く板についてきた……気がする。 気合いが入り過ぎて失敗ばかりの連続だけれど、園児達の笑顔に癒される日々。 子供達は可愛い。 可愛いの一言では済まないような事件は毎日起こるけれど。 あたしは成長していく彼らの通過点になって、逞しく生きて行く子供達の笑顔が絶えないよう導いて行けたら、と願う。 もう随分と暗くなった帰り道に雨の雫が迸る。 夏の手前の雨の匂い。 梅雨のじめじめはキライだけれど、季節の変わり目はいつも同じ。 夏が来ても冬が来ても、思い出してまた肌で感じるのは ……いつだって、あの人の事。 「……ハルトの好きそうな匂い」 離れてから久し振りに口にした名前。 口に出してから物凄く恥ずかしくなって、傘を差して歩く夜道に一人、照れ笑いを浮かべた。
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