June bride

6/100
前へ
/100ページ
次へ
「うぅっ……ハルト……」 『ふははっ、感動し過ぎ』 「もうっ、意地悪っ!」 だって声を聞くだけで、胸がじーんと熱くなるのに。 そんな優しい台詞まで貰っちゃったら、感動どころの話じゃない。 ……遠く離れて暮らすあたしの彼、伊達ハルト。 弁護士を目指して漸く司法試験に合格した彼はただ今、司法修習の真っ只中。 彼が所定の配属地に旅立って、もうすぐ半年。 ハルトの夢を邪魔したくないから。 あたしは一緒について行く事を選ばなかった。 初めて出逢ったあの日から、もう8年。 大人に生かされていたあたし達はいつしか大人になって、自分達で選んだ道を今、歩いている。 『ヒカルはちっとも変わらないね』 電話の向こうで彼がクスクスと笑う姿が、こんなにも簡単に思い描ける。 ハルトの一言一言が、こんなにもあたしの胸をドキドキさせる事。 二人を取り巻く世界が少しずつ色を変えても、ハルトに対する気持ちはずっと変わらない事。 きっと、あなたは知らないでしょうね。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1408人が本棚に入れています
本棚に追加