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「あ、あの。ハルトこそ何かあった?あたしに用だった?」
めったに電話を掛けてくる事もないハルト。
淋しさを感じながらも、そこにある彼の強い意志を尊重したいから。
『……』
ほんの一瞬の“間”にも、彼の心の内を感じ取れるような気がして。
『……だから。ヒカルの声が聞きたくなっただけだって言ったでしょ』
離れていても心だけは一番近くにいるって、信じたい。
「ふ、……ありがと。ハルト」
見える訳はないけれど、無機質な携帯電話に向けて飛びきりの笑顔を見せた。
『あのね……ヒカル。実は俺、約束してた月末の日曜、帰れそうにないんだ』
「……え?」
『次の法廷への同行、その日曜に決まったみたいでさ』
感じてた嫌な予感は見事に的中。
やっぱり何かあったから、あたしの声が聞きたくなったんだよね?
「……そっかぁ。残念だね」
物分かりのいい彼女。
そんなつもりはない。
ハルトにはハルトの。
あたしにはあたしの未来があるから。
遠回りしても、いつか辿り着いて交わる場所が、二人同じであればいい。
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