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Chapter 1 集い
女は一人、話し声が賑やかなファミレスで待っていた。
集合時間まではまだ30分程度の間があるとみたのか、摘めるものを注文して他のメンバーを待っていた。
そして、テーブルに並べられていたのはなんこつの唐揚げとドリンクバーのみだった。
女はそれでしばらく時間を潰そうとしていたのだろう。わずかばかりのなんこつを大事そうに口元に少しずつ、少しずつ運んでいった。
それも何かを惜しむかのように。
それから10分後、鏡を何回も確認する女が席に着いて一言。
「おっひさー、りなっち元気だった? 元気だよね? 私かわいいから」
私に声を掛けてきたのは友人の鈴音だ。
一見、地味女子の格好をしているけど、実際は男大好きな尻軽女だって周りはよく言う。
でも、気配りができて友達思いな所が私は大好きだ。
「あぁー、今私のこと好きって思ったでしょ? わかってるよ。私がかわいいからでしょ?」
この圧倒的なまでの自信が鈴音の良い所でもあり、一番の欠点でもある。こういう所が無ければ良い人なのにと本当に残念で仕方がない。
「あぁー、彼氏いるのが羨ましいんだ。りなっちも彼氏欲しいの?」
聞いてもいないのに勝手に話をし始めると、鈴音は幼稚園児をかわいがる保育士のように私の頭を撫で始めた。
鈴音は私が落ち込んでると判断すると、決まって頭を撫でてくる。
私が頭を撫でられれば機嫌が良くなると思っているのか、はたまた頭を撫でたいだけなのか、私にはわからない。
でも、屈託のない笑顔の人間に怒鳴ったり、怒ったりできない私は
「もうっ、やめてよー」
と軽く抵抗することぐらいしかできない。
それを見て、鈴音はかわいいものを見る目で私を見て抱きしめてくる。
「本当、莉奈のかわいさは罪だわ。私が男だったら嫁にしてるよー」
ーーどうも……。
心の中ではそう呟きつつ、若干引きつった笑顔で私はそれに応えた。
それでも鈴音を抱きしめてくる。無駄に発達したものを私にこれみよがしに押し付けて。
「ねぇ、こういうの好きでしょ? これ男にやると大体落ちるんだよね?」
ーーついに、私を男扱いですか?
呆れ半分と殺意に似た独特の感情に苛まれた。
それに気づかない鈴音はまだ自分のものを誇らしげに押し付けてくる。
「もうっ、あんたらったら。ここは風俗のお店じゃないよ」
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