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トンボが辺りを飛び、茜色の夕日が西に沈む頃。
「よしっ、今日の稽古は終わり!」
「ありがとうございました!」
隊士と一緒に十番組の組長である原田さんに頭を下げます。
フラフラとした足取りで屯所の中に戻ろうとしていると、背中をトンッと叩かれました。
「よっ、お疲れ様」
「原田さん。今日はありがとうございました」
「おう、こっちこそありがとうな。天宮のおかげで、隊士達の良い刺激になった」
「そうですか?私、特に何もしていませんけど……」
「いや、そんな事ねぇって。隊士全員がおまえに敵わなかったからよ。やっぱりおまえ強いよ」
「ありがとうございます。でも、原田さんには敵いませんでしたよ」
今日は十番組に仮入隊をしていました。そこで、練習試合を行ったのです。
結果、一般隊士には全勝したのですが、原田さんには負けました。
やはり、組長クラスは一般隊士とは違いますね。
「それはしょうがねぇだろ。天宮は俺と戦う前に隊士達と試合をしたんだ。
なのに、体力が無くなっているおまえに負けたら、組長としての面子は丸潰れだって」
「…原田さんはそう言いますが、たぶん体力が全開でも、私は原田さんには勝てませんよ」
「どうしてだ?」
「原田さんは槍の使い手ですよね。私、槍の人とは全然戦ったことが無いんです。経験が不足している為に、動きの先読みもままならない。
今の私じゃ、原田さんには勝てません。刀だけではなく、槍の戦い方も学ばないといけないです。まぁ、学ぶと言っても見切れる程度ですけどね」
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