師匠、蒼夜叉って知っていますか?

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心臓が激しく脈打っている。私は心臓を落ち着かせるために、一つ息を吸って吐いた。 もう一度、物陰から二人を覗き見ました。 「よくこれだけ調べられたな」 「かなり苦労したよ。あそこには監察方の山崎って奴がいて、常に目を光らせているからな。おまけに、副長の土方歳三も相当の切れ者だ。 奴等の目を盗むのは本当に大変だったよ」 「そうか。本当に苦労を掛けたな」 息を潜めて二人の会話に聞き耳を立てます。無意識に手が拳を作ります。 まさか、新選組にスパイが入り込んでいたとは、信じられませんでした。 そして、私が密会の目撃者となっているという事も。 後先考えず、直感だけで行動してしまった事を後悔してしまう。 相手は二人に対し、私は一人だけ。 それに、相手も刀を持っている。命を賭けた戦いになるのは避けられない。 だからと言って、新選組の情報が漏れようとしている今、二人を見逃す訳にはいかない。 近くにいる私が、それを阻止しなければなりません。 私は師匠の刀をギュッと握り、様子を伺います。 このまま飛び出せば、一人を相手にしている内に、もう一人に逃げられる可能性があります。 それか二対一で戦う可能性も大いにある。 ですが、例え、二対一であっても剣術には負けない自信はあります。 …しかし、平和な時代で生きていた私は人を斬った事が無い。 相手の骨肉を断つ感触を直接手に伝え、命の重みを覚えさせるのが刀という武器。 この時代に来た時からには、経験するであろう出来事。 自分の手で相手の命を奪うという事。 いざ、それが目前に迫っていると思うと、足や手が震えてしまう。
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