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「来ないで!これ以上来たら、斬ります!!」
「その震えた手で俺たちが斬れるのか?」
「っ…」
刀を握る手は震え、刀身が揺れていた。歯を喰いしばる。
「…斬れます」
「無駄な事は止めて、大人しく捕まれ。ほら…」
指を噛まれた男とは別の男が近寄ってくる。
再び溢れた恐怖。
「こっ、来ないで!!」
私は刀を振った。相手を傷つけるつもりは無い。ただ、相手が怯めばいいと思っていた。
でも
パシャ…。
空を舞う、紅い液体。生温かい物が頬が濡らす。
えっ…?
何…?
何が起きたの…?
「くっ、くそぉ…貴‥様…」
私の前には着物を紅色に染める人の姿。そして鼻につく生臭い臭い。
私は呆然とその光景を眺めていた。
「こっ、殺して‥‥」
「ひっ…!」
紅色に体を染める人が、紅を口から吐きながら刀を抜いた。
それを目で捕えた瞬間、私の体は勝手に動きだし、男の胸に刃を突き立てていた。
刃を伝い、私にドクッドクッと何かが流れる感触が伝わってくる。
再び顔が濡れ、手が紅色に染まって行った。
低く呻きながら倒れる男。
…そしてすぐに、その男の声が消えた。
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