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地面に倒れる人。地面を徐々に染める紅色。
その紅色は私の頬、着物、手にべっとりと付着していた。
両手を眺めながら私は自問自答を繰り返した。
私の前で倒れている人は何をしているの…?
(死んでいる…)
どうして死んでいるの…?
(私が殺したから…)
私…?
(そうだよ。体に着いている“血”が動かぬ証拠)
もう一度、自分の手を見てみる。紅色に染まった手。
私は持っていた刀を離しました。
「わたっ…私がっ‥‥殺し…た…」
私がこの男を殺したんだ…!
「うあっ…あぁ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさい!!」
殺してしまった…!!私がこの手で殺したんだ!!
この紅色は血。この男の血だ…!
「あぁぁ‥、あぁあ‥‥!!」
目から涙が流れる。私は夜空に向かって声を上げて泣いた。
「おまえ、よくも…。仲間を殺された恨み、晴らさせてもらうぞ!」
泣き叫ぶ私の近くには、刀を構えた人達がいました。
今度は私が殺される…。
泣いて、ぼんやりとした頭でその考えが過(ヨギ)りました。
でも、刀を持つ気力は無く、目の前で立つ人達を眺めているだけでした。
全身から力が抜けて、思う様に動かない。
私には、師匠の未来を変えると言う使命があるのに…。
だからこんな所で死ねないのに…。
頭では死ねないと思っている。けど、体が言う事を聞いてくれない。
まるで心と体が引き離されたような感じだった。
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