私の師匠は沖田総司です

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そして満月が真上に昇る頃、私は桜の木の前に立った。 「師匠」 私の呼びかけに師匠が現れる。 『本当に良いの?断ってもいいんだよ』 「大丈夫です。これは私の意思でもあります」 稽古の後、私はじっくりと考えたうえでタイムスリップすることに決めた。 両親には心配を掛けるけど、やっぱり師匠の未来を変えたいから。 馬鹿な娘でごめんなさい。でも、師匠は大切な人だから幸せになって欲しいの。 絶対に帰ってくるから、待ってて。 私の肩に重みが掛かる。肩には師匠の大きな手が置かれていた。師匠の目は私の家を見ている。 『大切な娘さんをしばらくお預かりします。僕が絶対に守りますから安心してください』 ……師匠、どこか彼女の両親に挨拶する彼氏の言葉に聞こえるのは気のせいでしょうか? 僕が絶対に守るなんてドキドキしてしまいますよ。 『さあ、行くよ。蒼蝶、目を閉じて。何があっても目を開けたらダメだよ』 「はい」 私は目を閉じる。 どうやってタイムスリップをするんだろうと思っていたら、唇に少し冷たくてやわらかい物があてられた。 何が起きてるか分からなかった。 目を開けて確認したかったけど、師匠に何があっても目を開けるなといわれたから目を閉じ続ける。 やわらかい物がゆっくり離れる。 『僕はいつでも君の傍にいるから』 近くで聞こえた師匠のこの言葉を最後に、身体が浮くような感覚と共に意識が闇に沈んだ。
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