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でも、未来の事など話せる訳もないので
「この前、明里さんのお話を聞いたんです。島原にとても上品な芸子がいると。そこで明里さんの名前をお聞きしました」
「…そうでしたか。確かに彼女は遊女とは思えない程、上品な方です。そして気立てが良い。…本当に素晴らしい女性です」
明里さんの事を話す山南さんの顔はとても幸せそうで、明里さんへの想いが伝わってきます。
見てて体中がくすぐったくなる様な不思議な感じがしますね。
「山南さんは明里さんの事が好きなんですね」
山南さんだけに聞こえるように小声で言うと、山南さんは少しだけ頬を赤らめます。
「…どうしてそう思うのですか?」
「明里さんの事を話す、山南さんの顔を見たら分かりました。だってさっき、とても幸せそうに彼女の事を話していましたから」
「…そうでしたか。はははっ…まさか、まだ会っても間もない君に、見破られるとは思っていませんでした」
「女は人の色恋に結構鋭いんですよ」
「そうですか。これは参りましたね…」
照れたように頬を掻く山南さん。
その姿を見て思わず、私は少しだけ笑ってしまいました。
「…山南さん」
「はい」
「このことは誰にも言いません。だから安心してください」
「天宮君…」
「頑張ってください。私はいつでも応援しています」
応援する様な仕草をすると、山南さんが微笑みました。
「ありがとうございます」
「いいえ。さぁ、入りましょうか」
「ええ」
私は山南さんと一緒に角屋の暖簾を潜りました。
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