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「ずいぶん遅かったな」
「土方さん」
店の中で土方さんが待っててくれました。その眉間には皺が寄っていて、私に視線が注がれました。
かなりのお怒りモードです。
怒られるかな、と思って身構えていると山南さんがスッと前に出ました。
「遅くなってすみません。私が彼女を引き留めてしまったんです。だから怒らないでください」
山南さんが私を庇ってくれました。
うぅぅ、ありがとうございます。
すると土方さんが溜息を吐きました。
「別に怒ってねぇよ。ただ二人がいつまでも来ねぇから心配だったんだ。近藤さん達はもう部屋に行ってる。案内するから着いてきてくれ」
土方さんの後ろを着いて行きます。階段を上り、いくつも廊下を曲がり、ある一室に辿り着きました。
「ここだ。ほら入れ、今日の主役」
「えっ?わっ!」
土方さんに部屋に押し込まれました。危うく前に倒れそうになります。
押し込まれた事により、少しムッとしながら部屋の中を見ました。全体的に広い部屋。襖や壁には鮮やかな絵が描かれています。
そしてすでにお酒を飲み始めている方が数名。
「遅かったな、天宮ちゃん!待ちくたびれたぜ!」
「お待たせしてすみません」
「天宮ァ、いつまでも突っ立てねぇで俺の隣に来いよ。酌してくれよ酌」
「平助、今夜の主役に酌をさせるな。それと、天宮の隣は俺だ」
斎藤さんが私の手を引いて隣に座らせました。
「モテモテだな、天宮」
原田さんがからかうような口調で言ってきます。
私は苦笑いしか出来ませんでした。
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