第5章 聖地

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ポーン 「……ちっ、こんな時間に誰だよ」 夜は耽け、高層マンションの最上階のこの部屋から見える街は光が少ない。 外では車の音も何も聞こえなくなった時間。 照明を消したままパソコンをいじっているとインターホンが鳴った。 こんな時間に訪ねてくるとは時間の感覚がおかしいのじゃないか? 普通の人なら寝ている時間だ。 俺はベッドで寝ているトゥエルを起こさないように、静かに玄関へ向かう。 「……何の用だ」 俺は鋭い眼光を放つ赤い瞳で来訪者を睨みつけた。 『任務。 テロ活動の情報あり。 首謀者とその関係者の壊滅。 ノルマはテロ勃発の防止』 来訪者は抑揚のない機械音で俺に仕事の指令を持ってきた。 身体つきは筋肉がものすごいマッチョだ。 ……ふざけているわけではない。 『マッチョ』という言葉以外にこの陸起動人型兵器の特徴を表すことができないのだ。 「ちっ…仕事かよ。 もう少し時間を考えろ」 『テロはシードの隣街〈ニート〉で行われる予定。 失敗は許されない』 マッチョは俺の言葉に全く反応せず、スラスラと仕事の内容を伝えていく。 「……ちっ、俺に命令すんじゃねぇ」 ガガガガガガガッ マッチョの身体は至る所が陥没を始め、原型がなくなっていく。 『生命ラインの断裂……ガガガ……確、認。 復旧作…業…』 「失せろ」 ガキバキゴキバキキキキ…… マッチョは手のひらサイズの小さな塊となってしまった。 「相変わらず容赦のないことをするわね」 「……そこにいるのは分かってる。 出てこい」 俺は廊下に響き渡った声に返事を返す。 「嫌よ。スクラップになりたくないもの」 「……このクソ女が」 ガンッ!! 「きゃっ!!ちょ、痛っ! え、嘘、何で分かったの!?」 「普通に見えてんだよ」 押し開いていたドアを全開にすると女がドアと壁の間に挟まれて悲鳴を上げた。 夜中だぞ。非常に迷惑なやつだ。
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