第一章 百鬼夜行

3/11
前へ
/15ページ
次へ
ねぇ、知ってる? 何が? あのスーパーでさ、また頭の可笑しいイケメンが出たらしいよ。 あぁ……例のあの。 めぐちんなんてさ、興味本意で話しかけたらしいけど……本当にヤバイって! 何が? ってか、ヤバイの何て前々から承知だったんじゃなくて? たまに見掛けるよ、独り言喋りながら歩いてるの。 違う違うって!! 凄い宗教臭いらしいの! ……へぇ、変な壺でも買わされたりしたの? 都市伝説とかを信じますか? とか、どんな妖怪が好きですか? とか、そういうの聞いてくるんだって。 キモッ……でも、アレでしょ? あの店員さんはよく話してるじゃん、あんなのと。 あの店員も頭可笑しいからねぇ、中学の時同級生だったけど……冷血って感じで。 毎日猫を貪ってるって噂だったし……。 ハァ? 捨て猫とか見ると、拾って持って帰っちゃうんだって。それからその猫を見た人はいないらしいから……。 うーん……それって、普通に優しいんじゃない? らしい、らしい、らしい――――と。 人の噂は伝説に。 ?  ?  ? 青い瞳が見据えるのは現か夢か。彼の姿を見据えるのは、悲哀の色か。好色か。 青年は見るからに重さを感じさせる袋を両手に下げ、そのどちらもを気にせずにその場を後にする。 その嫌でも関心を集める風貌。だが、彼に視線を向けるのは――人間だけではないのかもしれない。 「いやぁ、皆さん……本当に昼間からお元気で」 道行く所に彼等はいる。 だが、決して――それら彼等に見えはしない。童心を忘れた彼等には見えぬ伝説。 都市伝説―――― 雲一つ無い快晴の下。 男は僅かに口角を上げ、小さく呟いた。 「……今日もまた、誰かが困っているようですね」 ?  ?  ?
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加