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エレベーターが上がり始めると、ついさっきまでの甘い雰囲気が一瞬にして消えてしまった。
私の横に立つ渉さんが、私を見ずに言った。
「お前の噂で持ちきり…しかも菊森と」
私は慌てた。
だって、さっきはわかってくれていたのに。
「渉さんだって、言ったじゃないですか。それは…本当に噂なんです。意図的に…」
最初の室長の酷い噂を思い出すと言葉に詰まった。
説明しなきゃと思うのに上手く言葉が続かない。
すると、渉さんが言う。
「そんなことはわかってる。だが、そんな噂を広めたままにしとくんじゃねえよ」
「だって…止めようにも…」
…どうしたらいいのかわからない。
人の噂は長くはもたない。
自然に消えていくのを待つしかないと思っていた。
「はあ?アホか。俺の女だって言えばそれで済むだろが」
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