操り人形

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『室長と秘書の桐谷がデキている』 あのメガネ女子が最初に言っていたあの言葉が 今はこんな風に変わってしまっていた。 どこをどう伝わったのか。 そして、理央と奈美が怒りを爆発させていた理由はこの噂の補足部分にあったのだ。 『最上階では室長を取り合った女同士の泥沼。秘書の二人は室長にアタックするものの、全く相手にされず、室長が興味のあるのは桐谷だけ』 自分たちが相手にされない配役にさせられたことに、とても腹を立てている。 腹を立てるポイントが少しずれているけれど、私と同じ気持ちには違いない。 面白くて、盛り上がる話題だと思って みんな、嘘か本当なのかも気にせずに、とにかく口にしてみるのだ。 私たち三人は 我慢の限界に近付きつつも 当の本人は… 「磯山君、これ副社長に渡して来てくれ。西田くん、常務だが出発が30分早まるそうだ。悪いが準備に行ってくれ」 室長がデスクから慌ただしく指示を出す。 「…はい」 「…はい」 二人は一呼吸置いて、これまでの怒りを何とか鎮(シズ)めて秘書室を出て行った。
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