操り人形

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週末目前の木曜日まで、私は野崎さんと顔を合わせることはなかった。 心配になって送信したメールには 『大丈夫だよ』と短い返事が来ただけだった。 明日の金曜、前から話題にはしていたのに行けずにいたこともあって、私は彼女を夕飯に誘おうと思っていた。 渉さんにももう、了承を得ている。 少し遅れて入った食堂で彼女を探すけれど、そこに彼女の姿はなかった。 私は麺類を選択し、いつもよりも随分と早く食べ終えた。 食べている途中も出入り口を行き来する社員に注意していたけれど、彼女はやって来なかった。 私は山菜うどんの汁もほとんど飲まずに食器を返却し、営業部に向かった。 ガランとした営業部。 あまり期待はしていなかったけれど、 彼女はそこにはいなかった。
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