操り人形

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「ごめん、待ったよね?」 阿部さんとのやり取りのせいで、待ち合わせの時間に遅れてしまった。 「ううん、私も今来たとこだから」 本当かどうかは定かじゃないけど、彼女の気遣いに救われる。 「行こっか」 「はい」 私たちは並んで歩き出した。 久しぶりに見る彼女の明るい笑顔。 会社の外で会うことに、野崎さんも楽しみにしてくれていたみたいだった。 「今日は…社長はよかったの?」 会社を出たばかり歩道で野崎さんが小声で言う。 「うん、大丈夫。行って来いって」 …早く帰って来いって言われたことは…言わなかった。 「へえ…桐谷さんには優しいんだ?」 彼女が私の顔を覗き込む。 「室長だって、野崎さんには優しいでしょう?」
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