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それはほんの偶然
ある日のお昼休みのことだった。
「なんか、一緒に食べるの久しぶりですね」
お昼休みはもう半分ほど経過していた。
午後の渉さんの外出に合わせて準備をしていたので食堂に来るのが遅くなってしまった。
ちょうど入口付近で出会った野崎さんと今日は迷うことなく麺類の天ぷらうどんを選択した。
彼女も午前中の仕事をキリのいいところまで仕上げてきたようだ。
「最近は…いろんな仕事…頼まれるようになって…」
彼女はお昼休みを半分潰しながらも、嬉しそうに言った。
「忙しそうだね」
私の笑みに彼女はさらに微笑んだ。
二人で席に着くと、アツアツの天ぷらうどんに同時に箸を伸ばす。
あまりの熱さに舌が驚きかけた次の瞬間
もっと大きな驚きが
二人の箸を同時に止めた。
向かい合った私たちのテーブルの一つ向こう。
野崎さんの背中側。
私の視線の先で背を向けた女子社員が、その向かいにいる別の社員に確かにこう言ったのだ。
「…私さ。この前秘書室の菊森室長に誘われちゃってさ…」
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