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「…私も」
私が立ち上がろうとすると、野崎さんが私を止めて、小声で言った。
「…二人で席を立つと目立つから」
彼女は視線を伏せながら背後を意識した。
そして、私に何度か小さく頷くと
「じゃあ」
聞き取れるかどうかのか細い声を残して行ってしまった。
彼女が行ってしまうと、向かい合って座っていた私は向かいのテーブルで話に盛り上がっている数人の女子グループから完全に見えてしまった。
こちら向きに座っていた一人と…
目まで合ってしまった。
彼女はすぐに目を逸らし、話の中心になっていた一人に慌てて耳打ちした。
「ちょっと、後ろ。秘書室の桐谷さんいるよ」
耳打ちなのかそうでないのか、その声は私まではっきりと届いた。
すると、話し続けていた背中を向けた彼女がやっと口を閉じたようだ。
そしてゆっくりと私を振り返った。
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