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彼女のことは、野崎さんから聞いている。
…信頼できる人だ。
「あの、野崎さん見ませんでしたか?」
「ああ、さっきまでいたわよ。真っ青な顔して、具合でも悪いのかしら?」
「今はどこに行ったか…わかりますか?」
「さあ…。大丈夫かって聞いたら何でもないって言って出て行ったけど…」
長谷部さんは私を見て片方の眉を上げる。
「あれは…なんでもないワケ、ないわよね」
「…はい…」
私は短い時間で彼女に食堂での出来事を説明した。
そして、改めての自己紹介も。
「ふーん。何なのかしらね、そのメガネ女。まったく、どこの会社にもそんな女がいるのよね。どうしようもない女が」
彼女は腕を組みながらそう言って、そして付け足した。
「まあ、心配しないで。私がいるし。あの子、経験がないから今頃トイレの隅でいじけてるかもしれないけど。根も葉もない噂なんて、広まる前になくなるわよ」
彼女の頼もしい言葉に私の強張っていた顔も少し和らぐ。
そして、野崎さんのそばに彼女がいてくれることに安堵した。
野崎さんの顔を直接見ることは出来なかったけど、
私は秘書室に足を向けた。
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