黒い影

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ふと気が付くと、私はベッドに寝かされてブドウ糖の点滴を受けていた。 「最近低血糖になる頻度が多いようですね」 主治医の田島先生の言葉に、お母さんは、 「ええ、学校からもそのように連絡を受けてます」 暗い声でそう答えた。 「低血糖症は、血中のブドウ糖濃度が極端に低下して起こるものですが、低血糖に陥る頻度が以前よりかなり高くなってきているのが心配ですね。A1Cの値も極端に低い。一度インスリノーマの検査をしましょう」 その言葉に、お母さんの顔色が変わるのが分かった。 「わかりました」 私は先生とお母さんの会話を、目を瞑り、じっと聞いていた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 『今日、放課後の練習見れなかったな。またダンク決めてたのかな。見たかったなー』 血糖値が平常値に戻ってから帰宅した私は、自室のベッドに寝そべりながら、カシカシとツイートしていた。 廉くんがシュートを決めたり、走ってる姿を見ることが、私は大好き。 躍動感のある動きを、まるで自分のことのように身近に感じることが出来るから。 廉くんの周りは、いつでも、誰よりも、キラキラと輝いている。 彼の周りはまるで光の世界そのもののように、私の目には映る。 いろんな色が溢れる極彩色の世界。 それが私の目に映る、廉くんだった。 『明日見れるんじゃね?』 あ、フライドチキンくんだ。 私は途端に嬉しくなる。 まるで、新しい友達が出来たみたいな気持ちだった。 *A1C(HbA1c・ヘモグロビンA1C)とは、測定した日から約1~2ヶ月前の血糖の状態を推定するための値。
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