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『格好いいんだよ。羽が生えたみたいに高く飛ぶの。それを見るの、私すごい好き』
でも、もうしばらく見れないかな。入院も来週からって決まっちゃったから。
退院するまで見れないのは寂しいな。
そう思った時。
ハッとした私は、スマホを握る手を開いてみた。
指先が小さく震えてる。……舌もピリピリ痺れてきた。
測定してないけど、恐らく私はまた低血糖になってる。
せっかく病院で点滴してもらったのに、頭が鈍り、ぼうっとしてくる。
本当に、最近は低血糖になる頻度が増えてる。
なんでだろ。
昔はここまでひどくはなかったのに。
疑問と不安に苛まれながら、私は枕元に置いてあるアメを口に入れた。
ダルくなる体に喝を入れて、ガリガリと噛み砕く。
たくさんの欠片になったアメは、口の中でトロリと溶けてゆく。
これでしばらくは大丈夫なはずだった。
ぼうっとしながら、スマホに表示されたフライドチキンくんのツイに視線を戻す。
『アンタもそいつにゴール、教えてもらいな』
そうだね。教えて欲しかったな。
バスケのコートに入って、そして、一緒にゴールの練習をするの。
いいな。憧れちゃうな。
廉くんと一緒に、みんなで磨いた綺麗なボールを持って、ゴールの練習……。
ああ、どうしよう。すごく眠たい。
分厚いヴェールがかかったみたいに、私の視界に紗が掛かる。
世界がまた、灰色に染まってゆく。
眠たくて、もう……返事、出来そうにないよ。
――――ごめんね、フライドチキンくん。
ふわりと開いた私の手のひらから、スマホがコロンと滑り落ちた。
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