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ふうっと目の前の靄が晴れてゆく。
枕元で聞こえてきたひそひそ声に、意識が呼び戻される感じだった。
「この書類に、入院の手続きについての書類としおりがありますので目を通して下さい」
「わかりました」
母と、恐らく看護師さんの声。
むき出しの腕に刺さった点滴の管が、ベッド横まで伸びている。
ああ、また私、昏倒しちゃったんだと暗い気持ちで悟る。
血糖値の平均値はだいたい50~100くらいが平常って言われてて、私は50を下回ることが多い。
あまり低くなると、今みたいに昏倒して、ひどい時には死に至るって先生言ってた。
年間それで多くの人が亡くなってるって聞いて、怖くなった。
けれど、私には自分のことだけど遠くの話みたいに感じてた。
そう、まるでテレビのドキュメント番組を見ているのに近い感覚かな。
血糖値20~30台はその危険を孕んでて、だからお母さんいつもビクビクしてた。
子供の頃から私が昏倒するたび、きっと、怖い思いをしていたんだって今さらながらに思い知らされる。
だって、看護師さんと話すお母さんの声、濡れてた。
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