黒い影

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小学校中学校共に、毎日1番最初に学校へ行って誰よりもたくさん練習してた廉くん。 廉くんが誰よりもバスケが上手なのは、それは彼の努力によるものだって私は知ってる。 知らない人は、廉くんのことを天才ってはやし立てるけれど、それは違うんだ。 廉くんは天才なんかじゃない。 人の何倍も努力してきた結果であって、努力なしの天才とは違う。 私は一生懸命頑張る廉くんの姿をずっと隣で見てきた。 だから、今回もそばで応援したかった。 今回それが出来ないことが、こんなにも悔しい。 『なんで? なんで見れなくなった?』 フライドチキンくんからのツイが届く。でも、ホントのことは言いたくなくて。 『用事でしばらく出かけなきゃならなくなって。だから学校行けないの』 本当のことは伏せて、ウソをついた。 顔の見えないネット上では「普通で元気な」女の子でいたかったから。 それからしばらくして、『そっか』ひと言だけ、返事が来た。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 一週間後に予定していた検査が全部前倒しになって、翌日から始まった。 入院して2日目に、廉くんとあずみちゃんがお見舞いに来てくれた。 「よぉ。なにお前へばってんの」 ニッと意地悪な笑みを浮かべる廉くんと、 「大丈夫なの? みくる」 心配顔のアズミちゃん。 ふたりとも制服姿で、わざわざ学校帰りに寄ってくれたことが嬉しかった。 「大丈夫。検査するのに時間かかるみたいでね。そのための入院なの」 「で? いつ退院なの」 廉くんの問いに、 「んー、予定では一週間なんだけど、詳しくはまだわかんないんだって」 看護師さんが言ってた。私はそう答えた。 「検査って何するの?」 痛いことされるの? とアズミちゃん心配そうに、眉間に皺を寄せて聞いてきたから、私、そんなことないよって笑顔で答えた。
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