第1章

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ーキーン、コーン、カーン、コーン・・・。  『明日から夏休みです。勉強もいいけど、思いっきり遊んだり、旅行へ行ったり、分厚い本読んだり・・・別に授業のない分を有意義に過ごせとは言わないけど、夏バテはしちゃだめだぞ。それから宿題と日記は7月中に終わらせること。』  はーい、とみんな口々にいった。もう先生の話を聞く気もない。日記を7 月中に書くといった先生も先生だ。でももしかしたら誰かにつっこんで欲しかったのかもしれない。 夏休み0日目、とするなら終業式を終えた今日のことだろう。いつかはぶつかる自立という問題。それはまだまだ先だという考えが甘かった。 それ以来僕は度々小さなウソをつくようになった。日頃からやってるとウソをついてもポーカーフェイスで乗り切れるようになる、と思ってあれから一年たつ。しかし、ここぞってときのウソはまだついていない。 あのとき、委員会に気になる子がいなかったのが不幸中の幸いなのだと言い聞かせていた。  そして僕には今年、好きな子ができた。今日はそのため、念願であった帰り道の遠回りをする。彼女と僕では帰る場所が逆方向に位置している。だからどうしても帰ろうとすると、40分ほどいつもより遅く帰ってしまう。いくら委員会だからといってもそれだけでは母さんをごまかせない。何故ならうちの母親は息子の帰りが遅いといろんな家に電話をかけまわって確認するような人だ。 僕は今、彼女の後ろを追うように帰っている。帰るときでさえも彼女は後ろ姿でぼくを惹き付ける。 こんなに好きになった人は今までいない。僕の苦手な水泳の授業も彼女の水着姿にドキドキして、何だか時間が経つのが早かった。
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