第1章

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席替えで斜め前になったとき、僕は彼女の後ろ姿とほのかに漂う彼女の甘い香りに夢中になっていた。 体育は確かに苦手だけど、椅子に座ってやる授業なら、人一倍集中していたのに、異性に興味を抱いた途端このありさまだった。 もしかすると思春期になって、異性への欲が今までなかった分ぶり返してきているのかもなと思ったりもする。 とにかく、彼女ひとりの存在が僕にとってあまりに大きすぎる。いつでもいい、どんなことでもいい、早く彼女と繋がりたい。もし彼女が教室で繋がって欲しいと言おうものなら僕は躊躇わないだろう。しかし、そんな妄想はむなしいだけだ…。 彼女と僕が初めて会話を交わしたのは、不思議にも帰り道を歩いているときだった。 それは今年の春、僕がまだ小学校4年の頃。学校の図書室で本を借りてきた帰り道。その日借りたのは五年生の夏に書く、読書感想文のための本を借りた。僕は課題図書では感想を書かない。別にお金がないわけではないけど、もう少し読みごたえがあってもいいかなというのが正直なところだった。
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