第1章

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 意を決し、僕は彼女の方へと体を向けた。「君も、僕も大丈夫だから家に帰ろう」と振り向く間に頭で何度も練習した。女の子との出来事は僕にとって何度も起こることではないとわかっているから、遊ばれていると知っていても、体は鼓動を速めていた。そしてとうとう口を開こうとしていた時、彼女の唇がそれを遮った。  僕もやられてばかりいられないので、彼女の舌を吸いつくした。反抗心からしたことなのに、変な声を出してくるものだから、僕の理性は吹き飛び、完全に発情していた。今までの彼女とのやり取りを思い出しながら唇を堪能する。キスの仕方は親友のモテ男(みんなからそう呼ばれている)がいやほどリアルに聞かせてくるから、僕はいつも嫉妬していたけど、こんな時に役に立つとは思いもしなかった。  僕はどんどん嬉しくなって、彼女の体に触り始めた。彼女の反応を確かめるようにいろんなところに触れた。しかしこのとき、違和感を感じた。何故だろう、彼女の口から僕を求めることはしなくなっていた。彼女の顔を見ると目には涙が浮かんでいた。
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