6、ピーピングトム――続き

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 ナツメに実家はない。  両親はナツメが幼いころに他界し、育ててくれた祖父母もナツメが大学在学中に亡くなった。  ナツメは、自分と血の繋がりがある存在が欲しかった。  その気持ちを一吹に打ち明けたとき、一吹からの返事は、「今はまだいいよ」だった。時間を置いて、何度か訊いてみたが、返って来るのは煮え切らない言葉ばかりだった。  ついには、 「こども、こどもうるさいんだよ! 毎日こっちだって仕事で疲れてるんだよ、要らないプレッシャーをかけるな!」  と怒鳴られた。  一吹の仕事は医療機器のフィールドサービスだ。会社の医療機器製品の納入や修理、点検、トラブルが起こったときの対応や、医療機器の使用方法を納入先の医師や看護師等に説明する業務を行っている。  通常の修理やメンテナンスは病院の診療時間外に行われるので、早朝に出て行くことや、夜遅く帰ってくることがある。
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