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ナツメは涙を拭うと、キッチンに立った。
鮭のパックを取出し、予定通りサーモンソテーを作る。マヨネーズとレモン汁で、簡単なソースも作った。
シャワーの音が止み、一吹が浴室から出て来る頃合いを見計らって、ミネストローネを温め、冷蔵庫からサラダを取り出した。
テーブルに並べられた夕食を、一吹はいつも先に食べ始める。ナツメが席に着くことを待たない。
黙々と食事をとる一吹の横顔を見ながら、ナツメは先ほど義母からあった電話の内容を切り出した。
「あのね、このみさん、オメデタなんだって。今6か月だってさ」
一吹はナツメを見ないで、「ふうん」と返事をした。
ナツメはなるべく明るい声で話を続けた。
「結婚してすぐに赤ちゃん授かるなんて、いいなあ。このみさん、赤ちゃん早く欲しがってたもんね。よかったよね」
一吹からのリアクションはない。
「……うらやましいな」
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