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「そこでエルス様は、カイザーの心臓を護る二匹の獣を打ち倒し、見事、伝説の力を手に入れたのでございます!」
うおおおお!
歓声と拍手。
エバンスは打ち合わせ通り、冒険に色を付けて、竪琴の音にのせて、冒険たんを語った。
エルスは満足そうに拍手や歓声の音を聞くと、ターニア姫を誘って、テラスへと抜け出した。
ターニア姫は喜んで着いてきた。
「大変な旅だったのですね。エルス様。あのカイザーの心臓を手に入れるなんて。よろしかったら、手に入れた魔法の力の片鱗でもお見せになってくれないかしら?」
「申し訳ない、姫。伝説の力が目覚めるまでは、今しばらく時間がかかるのです。何か身体の中に、とてつもない力を宿した気はするのですが・・・」
「あら・・・」
エルスはまた恥ずかしさを覚えた。
エルスはカイザーの心臓が納められた胸に手をやって、何か魔法の力でも目覚めないかと念じてみた。
ドクン!
急に心臓が音をたてた。
すると、
「うわあああっ!?」
「どうなさったの?エルス様!」
エルスは自分の意識が、黒い霧の手に包まれる感覚を覚えた。
意識が遠のいていく。
そして、再び意識が戻って見ると・・・
「王女様!」
「ターニア姫が!」
「どうしたんだ?!」
「エルス殿が黒い化物に変身して、ターニア姫を殺した!」
エルスは耳を疑った。
自分がターニア姫を殺した?
エルスは目の前を見た。
そこには無惨な姿の血塗れのターニア姫が横たわっていた。
そして血塗れの自分の手。
「ば、馬鹿な!?」
「エルスを捕まえろ!」
「王女殺しだ!」
「剣を!」
エルスは大変だと思った。
逃げなければ。
無意識に心臓に手をやった。
すると、身体が変化して、巨大な烏になった。
エルスは、烏に変身して、屋敷から逃げた。
王女殺しとして。
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