第1章

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「そこでエルス様は、カイザーの心臓を護る二匹の獣を打ち倒し、見事、伝説の力を手に入れたのでございます!」 うおおおお! 歓声と拍手。 エバンスは打ち合わせ通り、冒険に色を付けて、竪琴の音にのせて、冒険たんを語った。 エルスは満足そうに拍手や歓声の音を聞くと、ターニア姫を誘って、テラスへと抜け出した。 ターニア姫は喜んで着いてきた。 「大変な旅だったのですね。エルス様。あのカイザーの心臓を手に入れるなんて。よろしかったら、手に入れた魔法の力の片鱗でもお見せになってくれないかしら?」 「申し訳ない、姫。伝説の力が目覚めるまでは、今しばらく時間がかかるのです。何か身体の中に、とてつもない力を宿した気はするのですが・・・」 「あら・・・」 エルスはまた恥ずかしさを覚えた。 エルスはカイザーの心臓が納められた胸に手をやって、何か魔法の力でも目覚めないかと念じてみた。 ドクン! 急に心臓が音をたてた。 すると、 「うわあああっ!?」 「どうなさったの?エルス様!」 エルスは自分の意識が、黒い霧の手に包まれる感覚を覚えた。 意識が遠のいていく。 そして、再び意識が戻って見ると・・・ 「王女様!」 「ターニア姫が!」 「どうしたんだ?!」 「エルス殿が黒い化物に変身して、ターニア姫を殺した!」 エルスは耳を疑った。 自分がターニア姫を殺した? エルスは目の前を見た。 そこには無惨な姿の血塗れのターニア姫が横たわっていた。 そして血塗れの自分の手。 「ば、馬鹿な!?」 「エルスを捕まえろ!」 「王女殺しだ!」 「剣を!」 エルスは大変だと思った。 逃げなければ。 無意識に心臓に手をやった。 すると、身体が変化して、巨大な烏になった。 エルスは、烏に変身して、屋敷から逃げた。 王女殺しとして。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加