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あたしは昂平の返事を聞く前に、鞄を掴んで部屋を飛び出した。
昂平をあたしの部屋に残すのは心底嫌だったけど、でも今はそんなのどうでもいい。
あのノートさえ、手元にあれば…それでいい。
「あら、あずみ~?昂平くんが来てるんじゃないの~?」
そんなお母さんの声も無視する。
お母さんさえ、昂平はすごくいい子だって思っている。優しくて気が利いて、いつも「あずみをお願いね」って言っている。
そんな昂平がキライ。
昂平なんてキライ。
キライ、キライ!大キライ!!
はだけたシャツを握ったまま、あたしは一度も振り返らずに家を出た。
涙を溜めた目尻はそのまま、熱くなった唇をゴシゴシと拭う。
…最低だ。
最悪だ。
きっと昂平は、“あずみにキスしたから千円”とか言って、明日友達に報告するんだ。
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