≠1 キライ

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あたしは昂平の返事を聞く前に、鞄を掴んで部屋を飛び出した。 昂平をあたしの部屋に残すのは心底嫌だったけど、でも今はそんなのどうでもいい。 あのノートさえ、手元にあれば…それでいい。 「あら、あずみ~?昂平くんが来てるんじゃないの~?」 そんなお母さんの声も無視する。 お母さんさえ、昂平はすごくいい子だって思っている。優しくて気が利いて、いつも「あずみをお願いね」って言っている。 そんな昂平がキライ。 昂平なんてキライ。 キライ、キライ!大キライ!! はだけたシャツを握ったまま、あたしは一度も振り返らずに家を出た。 涙を溜めた目尻はそのまま、熱くなった唇をゴシゴシと拭う。 …最低だ。 最悪だ。 きっと昂平は、“あずみにキスしたから千円”とか言って、明日友達に報告するんだ。
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