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『お前はこんな小さな世界で満足なのか?』
ケンジロウの問いかけにエリーは首を捻る。
『俺がここにいるのは、ここを出るためだ』
『はっ』
ケンジロウの言葉にエリーは鼻で笑った。ケンジロウに背を向け両手を広げながら彼は言う。
『ここを出る?ここは天国だぜ。外は地獄だ。俺はあんな世界に戻りたくはねえ』
『だがここに自由はない』
エリーはケンジロウの言いたいことが分からなかった。ここでは好きなことができる。力のある者にはすべてが許されているし、欲しい物はなんだって手に入る。まさに自由そのものではないのか?
『俺は自由だ。ここは楽園さ』
そう言って笑うエリーにケンジロウはその両の瞳を向ける。
『そうか…』
ケンジロウはその瞳をエリーに向けたまま逸らさない。その瞳はとても悲しげでエリーは言葉に詰まってしまった。
瞳を逸らしたいのに、何故か逸らせない。ケンジロウの心が悲鳴を上げているように感じた。
『ケンジロウ…』
『なら、俺とお前は相容れない存在だ』
エリーが言おうとした言葉をケンジロウが遮った。ケンジロウはエリーに背を向けた。
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