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『交渉は決裂だ。帰れ』
今まで黙っていたタカノリが口を開いた。扉を開けると、出て行けと言わんばかりにエリーを睨む。
エリーは何も言わずに部屋を出て行った。
その後姿を見送ってタカノリは扉を閉めた。ケンジロウは壁のレリーフを黙って見つめていた。
『エリーの事、本当は自分でやりたいんじゃないのか?』
タカノリは何も言わないケンジロウの背中に向かって言葉を投げかけた。少しだけタカノリの方に視線を向けたケンジロウは静かに言った。
『エリーの事はあの人に任せると決めた。俺たちには他にやるべきことがある』
『そうだな』
タカノリはそう言うと部屋を出て行った。ケンジロウを一人にしてやりたかった。彼の背中があまりにも悲しそうに見えたから。
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