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静かな時が流れていた。あと数時間もすればいつもの喧騒が戻ってくる。
だから彼は今のこの静かな時間を大切にしたかった。眠ることもせずに、彼は部屋の窓から見える月を見つめた。
細く消えてしまいそうな月は、まるで彼の心のようだった。
『君の代わりに誰もなれない…』
彼は小さな声で呟いた。誰に向けての言葉なのか、それは彼にすら分からない。
ただ、いつもその言葉が浮かんでくるのだ。だから彼は忘れてしまわないように、その言葉を刻み込む。
絶対に忘れてはいけない。彼の中の何かがそう叫んでいる。そう思えてならなかった。
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