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『キング、あいつをあのまま放っておくのか?』
いきり立つ男が荒々しげに言葉を放つ。言葉を投げつけられた男は黙ったまま部下に睨みを利かせた。その視線の鋭さに男は目を伏せた。
この「監獄搭」でキングと呼ばれるのは三人だけ。「スリーキングス」と呼ばれる三大勢力のトップだけだ。
今鋭い視線を部下に向けた彼が、その一人エリー。エリーは立ち上ると部屋の窓から外を眺めた。
いつ見ても同じ景色。ここから見えるのは灰色の雲に覆われた空と向かい側にそびえ立つ搭の姿だけ。だがエリーはその景色が好きだった。
この「監獄搭」はエリーにとっては居心地のいい場所だ。ここにいれば食べる物には困らないし眠る場所を探す必要もない。
むしろ外の世界の方が彼にとっては恐ろしい場所だった。
エリーは振り返ると部下に言った。
『あいつには手を出すな』
『キング!』
『このままにはしない。だが今はまだその時期じゃない』
キングの言葉に部下たちはにやりと笑う。
『じゃあ』
『ああ、キングは一人でいい』
エリーはもう一度窓の外に目を向けた。
『オミ、お前は必ず俺がぶちのめす』
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