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「ここが……異世界……!」
テレビもない所……と聞いていたので、勝手に文化があまり発達していない、少し寂し気のある場所を想像していたコウタは、想像と全く違った異世界に対して、素直に驚いた。
コウタが立つそこは、商店街の様に露店がズラリと並び、沢山の人が忙しなく行きかっていた。
行きかうその人達は、皆それぞれ独特な姿をしていた。サンバの踊り子のような派手な衣装を着ている人から、真っ黒なローブを見にまとった怪し気な雰囲気の人……今から仮装パーティーでも始めるのか、と思うぐらいだ。
珍しいのは人だけではない、左右どちらを見ても、見たことのない不思議な物ばかりで溢れかえっている。まるでゲームの中の世界じゃねえかーー興奮を隠せないでいる
コウタには青い空がとても高く感じた。
そんな興奮しきったコウタの目を一番に惹いたのは、キラリと光を反射する豪華な装飾を纏った少し短めの槍だった。
同じように露店に並ぶ槍とは、長さこそ劣るが、他の槍にはない精気が不思議と感じられ、その堂々たる姿に一際目を惹いた。
「うおお! あれ! あれかっこいい! あの槍!」
『落ち着け、コウタよ』
静かに佇むその槍に駆け寄ろうと、右足を踏み込んだコウタの動きがピタリと止まる。それは、コウタの意思ではなかった。
「うお、お、お……身体が動かないぞ……何これ……!」
『言っただろう。貴様の身体に寄生する、と』
「だっ誰だ……?」
『私だ。もう忘れたのか』
「え、もしかして神様……? え、ええ、何その声……声変わってんじゃん」
『ああ、変化をといたからな。これが私の本当の声だ』
「そうだったのか……変化したままでよかったのに……。つか、身体動かないのは神様の仕業かあ!」
『そうだ。私が寄生している間、この身体は私と貴様で共有させてもらう。勿論、痛みや安らぎも共有される。だから変な真似はするんじゃないぞ』
「へえ……一心同体って事か」
「そういや、神様何処に居んの? 姿見えないけど……声しか聞こえない」
『寄生していると言ったろう? 私の本体は別の場所にある。姿が見えないのは当然だ。この声だって貴様にしか聞こえないだろう』
「ま、マジで! じゃあ周りの人から見たら、俺一人で喋ってるみたいなのか! うわ、うわ恥ずかしい」
『そんな事、気にするな』
「いや、気にするわ! 怪しいだろ一人で喋ってたら!」
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