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「うわ、うわあ! なんだ身体が軽い!」
『ふっ、これが身体強化魔法の力だ。さあ、あの少女を追うのだコウタ』
「おうよ!」
少女は、さっきと比べものにならないスピードで追いかけてくるコウタに気付き、更にスピードを上げた。
どんどんと行きかう人々を避けながら進んでいく。進むに連れて露店や、人が少ない場所に移動していく。とうとう町外れまで出てしまった。そこで、やっとコウタは少女を追い越し、走る少女の行く手を阻むように両手を広げて止めた。
「よし、追いついた!」
「…………!」
少女はコウタを睨み付けながら、グッと果物を庇うように胸元に引き寄せる。コウタはその様子を見て腰に手を当て、一つ息をついた。
「……お腹すいてんの?」
「…………」
「いくらお腹空いてたって人の物買ってに奪うのはダメだぞ」
コウタの言葉に少女は俯く。少女は戸惑いつつも、小さく「ご、めんなさい……」と呟いた。コウタは、先程会った女性の笑顔を頭で思い浮かべながらニコリと笑った。すると少女も少し不思議そうな顔をして、女性に笑いかけられた時のコウタのように口元を緩ませた。
「それ、お前にやるよ」
「え……、いい、の……?」
「お腹減ってんだろ? でも、もう二度とこんな泥棒みたいな真似しちゃダメだぞ。もしお腹減ってどうしようもなく我慢できなくなったら肉まん屋の前で物欲しそうな顔をしてみ? きっと誰かが奢ってくれるさ」
少女はコクリと頷き、コウタが話している途中で、我慢できないと言うように真っ赤な果物にかぶりついた。その様子を微笑ましげに見ていたコウタは、ふとある事に気が付いた。果物を握る少女の腕が細すぎる。顔の頬も子どもにしては痩せていて、どこかやつれてしまっているように見える。しかも、足首まであるロングスカートは無地の荒んだ色のもので、女の子が身につけるには質素過ぎるような気がした。
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