三章 南陽黄巾軍

3/14
前へ
/45ページ
次へ
「宛城を包囲してもう三日目だ。そろそろ何かした方が良いと思うんだけど?」 「そう簡単にはいかないわよ」 「古来より、篭城した敵を倒すためには、三倍以上の兵が必要と言われている。確かにこちらの兵数は三倍に少し足りない程だが、先陣を我らが務める以上、現時点での兵数はあまり当てにならん」 「難しいね~、本物の戦っていうのは」 「そう思ったのなら、少しは口を閉じておけ」 「そうするよ」  宛城包囲戦線の西側。そこには孫策、周瑜、征夜の三人が軍を敷いていた。  篭城を始めた黄巾軍は未だ一度も姿を見せておらず、無駄に兵を失いたくない味方側は攻めあぐねていた。  南側に布陣している、朱儁、孫堅、秦頡ら本隊は、散発的に攻撃を仕掛けているものの、効果はないようである。 「この前みたいな火計は出来ないのかな?」 「そう何度も同じ手が使えるか。前回は敵がこちらの接近を悟る前の油断を突けたから成功したのであって、本来奇襲など、簡単には成功しない」 「奇襲は掛け要素も高いってことか」 「そうだ。だから少し黙れ」 「周瑜がだんだん怖くなってく」    §§§§§§§  朱儁は戦場が他にもあるため、勝てる見込みが出るまで兵を失いたくない。  秦頡は南陽太守として、この地の今後を考え兵を失いたくない。  孫堅はその二人の考えを知っているため、無駄に攻めても徒に兵を失うため、思い切った攻勢に出れない。  黄巾軍は攻勢に出ても勝てる見込みがないため、攻勢に出てこない、と考えられる。少なくとも孫堅なら下手に攻めはしない。  戦況は膠着状態だが、いつまでもこのままにして置くと、近隣の邑などの民も黄巾側に着く恐れがあるため、なるべく手早く終わらせないといけない。 (徒に時ばかりが過ぎる。何かきっかけがあれば良いのだが。本陣にわざと隙を作り敵に攻めさせようか。いや、それだけではまだ決定打に欠けるな。せめて冀州の黄巾軍本隊が劣勢になってくれれば良いのだが)  孫堅は一人、本陣で頭を悩ませていると、幕舎の外が騒がしくなる。  訝しんだ孫堅が外に出ると、丁度朱儁と出くわした。慌ただしい様子の朱儁を不思議に思い、声を掛ける。 「如何なされた、朱儁殿」 「おう、孫堅殿。これより一気に攻勢に転じる。故にこれより軍議を開く」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加