三章 南陽黄巾軍

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「ようやくまともな戦か。腕が鳴る!」 「私、もう絶対に攻城戦で朱治さんと一緒の陣になりませんから」  北門に配置されていた朱治は、ようやく始まる攻城戦を前に、鼻息を荒くしている。対照的に程普は、何度か無理攻めをしようとした朱治を抑える役回りだったため、精神的な疲労を見せていた。 「程普に朱治殿の相手はまだ早かったか。次からは私か公覆がやるしか無いようだな」 「私にも君理の相手は務まらんぞ?」  戦前でもいつもと同じ涼やかな雰囲気を醸し出す凌操。その彼といつも親しげに話す黄蓋。二人は東門から自分の隊を率いてきた。 「ねぇ、公瑾。わざわざこんなことしなくても、こんな城、すぐ片付くと思うんだけど?」 「全軍で本気で掛かればな。しかし策を練らねば動かん軍もいた。故に策を練ったのだ」 「孫策、少しは働き者の周瑜を見習った方が良いんじゃない?」  朱儁に策を伝え終わり、後の指示を任せて帰ってきた周瑜に、孫策は身も蓋も無い言葉を掛け、それに冷静に答える周瑜を庇うように、征夜は本気と冗談が交じり合った言葉を吐く。 「そう言うな、征夜。孫策には孫策の良さがある。かと言って、周瑜任せで良いとも言えんがな」  北門に敷かれた本陣から来た孫堅が、追い打ちとなる言葉を掛ける。 「私が働いてないみたいな言い方だけど二人共。私もちゃんと働いてるからね?」  孫策は冷や汗をかきながらそう言うが、あまり説得力はない。 「二人共。伯符殿のことは取り敢えず置いておけ。まずは目先の問題に片を付けよう」 「まずは韓当殿が戻って来てからですね」  黄蓋の言葉に、周瑜が相槌を打つ。  この場に韓当が居ないのには、勿論、理由がある。孫堅と共に本陣にいた韓当は、周瑜に頼まれて朱儁のことを探っていたのだ。  ああまで急に態度を変えられては、流石の周瑜も不安になる。 「あ、韓当さん戻ってきましたね」  程普の声に、全員が顔を韓当が戻ってきた方に向ける。 「お疲れ様です、韓当殿。首尾は如何ですか?」 「全く苦労した。周瑜、こういう任務は俺より凌操殿の方が向いているだろう?」 「ですが、毎回凌操殿に頼むのも如何なものかと思いました。それに、今回韓当殿は元から本陣におられましたので、あまり怪しまれなかったと思いますが?」 「そうだがな。まあ良い。それより朱儁殿が急に態度を変えた理由は分かったぞ」
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