ヒーロー達は格好つけたい

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   ガサガサガサ。  背後から、稾が擦れ合う乾いた音がついて来る。 「奇遇だな、町田さん」  続いてかけられて来る、朗らかな青年の声。  止めて、来ないでぇええっ!  私は彼を振り切ろうと、歩く速度を速めた。 「町田さん! 気づいてないのか、町田さん!」  ガサガサガサ……!  腰簑の音が追いかけて来る。  お願いだから名前を連呼しないで下さい! 「町田さん、何故無視するんだ?!」  ガササササ……!  ひたひたひた……!  腰簑の音が激しさを増し、それに不気味な裸足の足音が混ざり始めた。  無視されてるのが分かってるなら、空気を読んで!  ついて来ないで!  私は直ぐ様速歩きから、小走りへとシフトチェンジする。 「待ってくれ町田さん!」  ガササササ……!  だが尚も執拗≪しつよう≫に追いかけて来る、マサイの戦士という名の変質者。  そして擦れ違う人々から送られて来る、とどめのような好奇の視線。  ひィいっ!  私は半泣きになりながら、全力疾走へと切り替えた。 「何故逃げるぅうう?! 勝負か?! 勝負なのかぁあああっ?!!」  それが暑苦しい青年の、何らかのスイッチを入れてしまったようだ。  一層激しさを増した腰簑の音と足音に、私は恐る恐る背後を振り返った。  すると鬼気迫る形相で肉薄して来る、原始人が視界に映る。 「うぉおおおお~……!!」 「ひィぃいいいいっ!!」  ガサガサガサ……!  しゅたたたたた……!  ぴしりと五指を揃えた両手を振り、腿を高く上げる美しいフォームで追いかけて来た。 「ぶるぁあああああ~っ!!」 「ぎゃぁああああ~~っ!!」  ガササササ……!  すたたたたたた……! 「ずげげげげげぇえええ~!!」 「ゔぁああああああ~……ッ!!」  バザザザザザザ……!  ズドドドドド……!
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