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「陛下、こちらのスカーレットのお召し物はいかがでしょう? 陛下の大理石のようなお美しい肌が引き立ちますよ」
「いえいえ、陛下。今年の流行はローズピンクでございます。こちらのドレスを陛下がお召しになれば、まるで大輪の薔薇のように見えることでしょう」
西の王国を統べる女王シャルム・レピドゥスの住まう王城。
その一角にある豪奢な部屋で、王室御用達の名誉と利を求め、服飾デザイナーたちが華麗なドレスをこれでもかと言わんばかりに床一面に広げていた。
鮮やかな色の洪水。
その中心で、シャンパンゴールドのドレスに身を包み、艶然とした笑みを浮かべた妖艶な美女こそ、『女王蜂』の異名を持つシャルム・レピドゥス女王、その人だった。
「皆様のドレスはどれも美しいわ。けれど、わたくしが欲しいのは、わたくしにしか着こなせないようなドレスなの。もっと新しいデザイン、誰もがはっと息を呑むようなものはないのかしら?」
女王のルビーのような朱唇から発せられた蜜のようにとろりとした声に、痺れたように皆の動きが止まる。
「あら? 皆様どうかなさって? 人形のようだわ」
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