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女王が白魚のごとき指を動かし、扇を広げて口元を隠すと、鈴を転がしたような笑い声を上げる。
その澄んだ笑い声が耳朶を打ち、皆が夢から醒めたようにはっと瞬きをした。
「も、申し訳ありません。でしたら、こちらはいかがでしょうか? 胸元が大きく開いた斬新なデザインは、陛下の真珠のように輝くデコルテを余すことなく披露して頂けます」
女王の魅了からいち早く我に返った最も若手の服飾デザイナーが、ふんだんにレースをあしらったミントグリーンのドレスを広げる。
途端、ぱちんと女王が扇を閉じた。
がっくりと項垂れる他のデザイナーたち。
そして、女王が雪のように白く輝く右手を差し出す。
若手デザイナーは歓喜に頬を紅潮させ、その右手を取り、甲に唇を押し当てた。
「あなたに今度の晩餐会のドレスも任せるわ。次に会うときまでに持って来て下さる?」
「は、はい! 光栄です! 感謝致します」
女王の言葉に涙ぐみ、ひれ伏す若手デザイナー。
「次は、アクセサリーね。もう皆様集まっていて?」
「はい、陛下。皆、次の部屋で陛下をお待ちです」
女官長の言葉に女王は優雅に立ち上がった。
「では、皆様。ご機嫌よう」
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