置き去り世界

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まさか、ユウトに先に死なれるとは思ってなかった。 死ぬのはあたしが先だと思ってた。 うつ病で自傷癖のあるあたし。 傷が増えてく度に、 「またやっちゃったんかー。痛かったなぁ。よしよし」 って、優しく寄り添ってくれたのはユウトだった。 「ユウト、あたし死んじゃうかもしれないよ?いつかパッと消えちゃうかもしれないよ?」 そう訴える度に、 「カナはなぁんも心配せんでええで。」って、頭を撫でてくれたのもユウト。 ユウトのそばにいる間は、あったかくて、落ち着いて、幸せだった。 このひとと一緒にもう少し生きていたいと思えた。 ユウトが「疲れた」って言ったのは一昨日。 珍しく沈みこむユウトにかける言葉が見つからなくて、あたしは戸惑った。 ユウト、どうしちゃったの? ユウト、消えちゃうの? ごめんね、って言葉が溢れてきた。 ごめんね、ごめんね。 あたしが死にたいとか苦しいとか言ってるとき、ユウトは悲しかったんだね。 ずっと気付けなくてごめんね。 これからは悲しいことは言わないよ。 ずっと笑顔でいるよ。 誓って、ただユウトを抱きしめた。 「ありがとう」 その微笑みが儚くて、大きな体があまりにも頼りなくて、こぼれそうになった涙を必死で飲み込んだ。 「カナ、ありがとな。元気でたわ。ほんまにありがとう。」 昨日の朝、そうメールが来て、嬉しかったのに。 元気でたって言ってたのに。 ユウトは死んだ。 会社の屋上から飛び降りて。 置いていかれた。 嘘をつかれた。 絶望で涙も出なかった。 何をする気力もなく、誰にも会いたくなくてあたしは部屋にこもって鍵をかけた。 時計の秒針の音しか聞こえない。 初めて心の底から死にたいと思った。
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