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「………ライさん…」
「雨音、雨音が抱えているものを俺も抱える。そうすれば痛みも悲しみも半分ずつ…。」
「ライさんはもういろんなものを……」
「平気だよ。これでも純血種のヴァンパイアだよ」
笑顔を見せてくれた。今の僕にとってライさんの笑顔は救いだった。
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~轟side~
戦争が休戦になり60年。
大きなコンクリートの壁が二つの国の国境を表している。沢山の人が死んでいった。俺は生き延びたが左目を失ってしまった。でも、こんなのは軽い。雨音様の死に比べれば…。63年前の戦争の吸血鬼たちの前線で戦っていた。漆黒の長い髪をなびかせ紅い目は人の心に恐怖を与えたが美貌が恐怖を消し去るように人々を虜にする。
戦争で生き残った人々は雨音のことを悪魔とも死神とも言わない。〈戦場に降り立った天使〉と言っているのだ。おかしな話だ。吸血鬼側にいて仲間が殺されていっているのを知っているくせに天使という。
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