高校生時代の僕

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 彼の想いが伝わってくる。無視は出来ない。 「大丈夫。僕は、ハカセのお兄さんのようにはならないよ。苦労を味わって、自分の足で自分の道を歩んでいく。分からないこともいっぱいあると思う。その時は、助けてよ」  気付いたら僕の手は、ハカセの頭の上にあった。優しく、彼の頭を撫でていた。 「だけど、自分の人生を放り出さないで。ハカセは自分の、夢を追いかけてよ」 「っ……ホンマやな?」 「うん。ホンマ、だよ」  ニコッと僕が微笑んでみせると、ハカセは声を上げて泣き出した。  生きているのか死んでいるのかも分からない、行方不明のお兄さんを探せない。その悔しさや悲しみに満ちた涙が、何度も何度もハカセの頬を滑り落ちていく。  授業の開始を告げるチャイムが鳴ったけれど、気にしない。僕は、今までの僕にサヨナラをしたんだ。  大人達の目は気にしない。これからは、ハカセのように自分の頭で考え、自分の足で歩いていく。前に道がなくてもいい。道は、僕が踏んだ後ろに出来るんだから。  そう自分に言い聞かせると、僕は彼をそっと抱き締めた。 「そういう風に気遣ってくれるの。ハカセが初めてだよ……ありがとう」  驚きのあまり涙が止まったハカセ。体がだんだん熱を帯びてくる。 「…………」 「…………」 「もう、大丈夫やから…」 「あ、ごめん!」  しばらくそうしていると、いつもの冷静さを取り戻したハカセが僕の胸をグッと押した。  男同士だけど、抱き締めていると何だかホッとした。落ち着くというか、安心するというか…  僕から1歩離れたハカセは、白衣を正すと僕に人差し指をまっすぐ向ける。僕の顔に何かついてる?
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